卯辰山麓寺院群歴史の音風景めぐり
はじめに
金沢は歴史的町並みが今もなお市街のあちらこちらに残り、風情のある景観を形成しています。卯辰山麓寺院群 は東茶屋街など歴史的街並みと卯辰山という自然の境界にあり、都市と自然が渾然となった景観を作り出しています。ワークショップ当日は雨で足元が悪かったため、山の上のお寺に至る道は安全を考慮して断念しました。天気のよい日に、再度卯辰山麓をめぐってみませんか。また別の発見があるかもしれません。
ワークショップの概要
日時:2002年9月16日(月曜・振替休日)9:30-12:00
講師:土田義郎(金沢工業大学助教授)、増田達男(金沢工業大学助教授)
行程の概要:
東山河川緑地に集合---音を聞き取る課題
東山地区の歴史的まちなみを散策
西養寺---住職のお話と音を聞き取る課題
心蓮社---鐘をついたあとに住職のお話、講師による講演とまとめ
アルバム
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浅野川沿いの東山河川緑地に集合 |
宇多須神社を通り抜ける |
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西養寺境内での音の聞き取り課題 |
心蓮社で鐘を撞く |
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心蓮社住職のお話 |
心蓮社の庭を見ながら |
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城下町金沢の解説(増田) |
音風景めぐりのまとめ(土田) |
実施した課題
最初に集合した東山河川緑地と西養寺では、「イヤークリーニング」という音を聞き取る課題を実施しました。
○音の指摘数の比較
東山河川緑地では7個くらい書いた方がもっとも多く、西養寺では4個くらい書いた方が最も多かったです。これは、河川緑地では国道や川が近く、生活音も自然の音もどちらも聞こえてくるような場所であったためと考えられます。ただ、よく見ると、西養寺でも14個もの音を聞き取った方もいます。これは、鳥の種類まで聞き分け、遠くの小さな音まで聞き取っていた事で音の指摘数が増えたようです。
○音の大きさと好ましさ
音の大きさの判断には河川緑地と西養寺の間に意外にも大きな違いはありませんでした(図2)。河川緑地の方が道路から聞こえる音によって大きな音がもっと多くなるかと思ったのですが、数からするとそれほど多くはなりませんでした。音の大きさの物理量を計測するとおそらく差があるのですが、表通りから比べるとどちらも静かであったということでしょう。
好ましい音の数を見てみると、こちらには違いがはっきり出ていました(図3)。西養寺の方が好ましい音の比率かなり高くなっています。人工的な音がほとんど聞こえない環境ということが大きな要因であったようです。
それぞれの音の相互関係を図にしますと、小さいと感じる音の方に好ましい音が多かったようです(図4)。
○感想文
最後の課題として皆さんに感想文を書いていただきました。そしてそれらは報告書として原文のまま掲載し、参加者に配布しました。それにより、今回のワークショップの記憶を長くとどめ、また、家族に見せたりすることで間接的なワークショップの体験ができることを見込んだからです。
その際、「昔聞こえたであろう音はなんだろうか」「現代に特徴的な音はなんだったか」「これから未来に向けて残していきたい音環境はどのようなものだろうか」という3つの点について考えながら書いていただくようにしました。
当日では遠慮しておられたのかいろいろ懐かしい音風景や残していきたい音風景への希望などが、ていねいに述べられた感想が多いことに驚かされました。
あとがき ワークショップを終えて
今回は、金沢の北部の市街周縁に散在する卯辰山麓寺院群の周辺を散策しました。移り行く時の流れに消えてゆく音もあれば、百年、二百年と変わらずに聞こえていたであろう音もあります。静かに耳を傾ける事で、歴史や自然があらためて見えてきます。
音に対する感性とは、情緒豊かな心をはぐくむものであると信じています。静けさと賑わい。どちらも心豊かな人生を歩む上で、欠かせないものであると感じます。
さて、都市に潤いをもたらす音風景を次世代へと引き継いで行くために、私たちはどうしたらいいのでしょうか。これからのまちの一つの課題なのでしょう。
(2002.9.31)
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